クランケは50半ばの女性の方。
だんな様がまもなく定年ですが、老後資金の運用は奥様にお任せとのこと。
少しでも老後を豊かにということで、オフショア投資を決意され、現在までに2社とお付き合いがあるとのこと。
FPIのPPBを組成されており、ヘッジファンドばかりなので、株式ファンドとかも組み込みたいとのお話。
来院時は、いろんなファンドに関するお話や、果てはIPOに関してまで話題が飛び、かなり詳しい方何だから、どんどん指示されれば良いのに、何でかなあ???と思っていました。
ヘッジファンドばかりというところにややきな臭いものを感じましたが、やはり、いやな予感が的中。
よくよく聞くと、ご本人はそれほど金融知識がおありになるわけじゃあないことが後ほど判明したのでした。
現有ファンド拝見
「ヘッジファンドばかりですが何種類か分散してます。通貨もUSDばかりではなく他にも分散してます」
ヘッジファンドばかりというあたりに、ややきな臭さを感じました。
それにしても、ヘッジファンドばかりで、USDとEURに分散とはいかなる状況でしょうか?
とりあえず、見てみればわかるかなと思い、現有ファンドをお聞きしました。
FPIのPPBですので、Valuation Reportを送ってくださればわかりますよと申し上げたのですが、わざわざ、メールに打ち直して送ってくださいました。
MAN AHL Diversified Plc USD8万 (PPB外)
以下PPBに含む
MAN IP220 Plus Ltd Series2 USD5万
MAN IP220 Plus Ltd Series3 USD5万
Quadriga GCT USD Class USD2万
Quadriga GCT EUR Class EUR2万
OM-IP140 NZD2万
うぅぅぅ、、、、、、、
通貨分散は理解しますが、なぜにニュージーランド????
それに、同じファンドで通貨を変えても、、、、、、
理解に苦しむのは、PPB外にUSD8万もの資産を保有している点。
さらには、PPB内のファンドを全部足しても、GBP換算で10万に届いてそうに見えません。
PPBの資産額ですが、初期の金額では、おいくらだったんですか?
1800万円ぐらいです。
そうするとCapital Redemption Optionという、99年債ではなく、生命保険契約でしょうか?
・・・・
ええと、お分かりにならないのでしたら、Valuation Reportを見せていただけませんか?
その、何とかレポートってなんですか?
少なくとも3ヶ月に一回程度、現在の資産額が記された明細とか送ってきませんか?
はあ?
・・・・
診断
病名は「MAN/QUAがん」。さらに、合併症としてPPBのコンプライアンス違反症も併発。
MAN硬変もひどかったですが、こちらは、PPBを組成しているのに、MANとQuadriga(現在のSuperFund)ばかり。
通貨分散とは名ばかりで、単に同じファンドの建値通貨を変えただけ。
MANのAHLプログラムも、Quadrigaも先物をつかったよく似た戦略のファンドです。
Quadrigaのほうが、金融市場と商品市場のエクスポウジャーの比率が50:50で、AHLは金融70%といわれています。
多少、運用に違いはあるものの、おんなじような市場のおんなじ様な戦略なので、まったく分散になりません。
さらに、ひどいのは、PPBの外に、MAN AHL Diversified Plc(ADP)があるという点。
突っ込んでお聞きしてみると、最初に投資した業者で、PPBではなく、単独でMAN-ADPを購入し、別の業者でPPBを組成したが、二つ目の業者でPPBへの移管をするはずだったのに、ぜんぜんやってくれないとか、、、、、、
この、MAN-ADPを移管していれば、初期資産額がGBP換算10万を超えるので、99年債の形式を取る、Capital Redemption Optionが選択できていたはず。
(厳密には、生保契約は、保険業法違反になる可能性が高い。実質とがめられたという話は聞いたことがないものの、大丈夫とは言い切れない)
おまけに、IFAから、なんらのレポートも来ていないとか、、、、、、
(IFAにはアドバイザーフィを年0.5%~1%程度払い続けているわけですから、それぐらいは要求すべきなんですが、おそらく知らされていない模様)
Quadriga(現在はSuperFund)についても、ファンドの建値が変わっても、まったく通貨分散したことになりません。
同じヘッジファンドの額面通貨が変わっても、中身は同じだからです。
当然ですが、通貨が変わった分、為替レートで換算されて配分されるだけなので、実施価値は変わりません。
Quadrigaが入って一見多少分散しているように見えますが、PPB移管問題や、生保契約、といった病も併発しており、MAN硬変の例よりひどい症状化も知れません。
治療方針
「手術にて外科的治療・内臓移植」
これまた厳しすぎる病状ですので、まずは、MAN-ADPをPPBへの移管し、まとめるところからです。
次に、やはり、中途半端なファンドを整理して、ポートフォリオを一から見直さないといけません。
よくよくお聞きすると、ご主人がリタイアされた後の年金の足しになるように、年利10%ぐらいで着実に運用したいのだとか。
で、利息部分を年金の足しにまわせれば良いかなあと、、、、、
なので、Quadrigaのような騰落の激しいファンドは望んでいなくて、儲けるというより安定が望みなんだとおっしゃいました。
どうやら、今までは、なめられてはいかんと背伸びをされていたようです。
こんなポートフォリオを組まされたり、PPBの契約がいい加減だったりするので、業者を警戒する気持ちもわかります。
そういうことなら、やはり、大きく設計変更して、安定性の高いモーゲージや賃貸不動産ものを組み入れて、なおかつ、年金での生活に入るころには、再投資型のファンドばかりでなく、配当型のファンドも組み入れて、リバランスによらずに利息引き出しができるようにしておくのも便利です。
そういった、運用の目的に沿った銘柄選択をしないと、如何に単独では優秀なファンドであっても、投資の目的から外れてしまい、意味を成さなくなります。
本来、FAの仕事は、顧客の人生設計の一助になろうとするものですが、おそらく、そんなこと2の次で販売ありきなんでしょうね。
同じファンドで通貨分散したつもりになっていませんか?
ファンド運用の中身について確認していますか?
あなたの運用方針と銘柄選択があっていますか?
PPBホルダーの方はちゃんと担当IFAから報告がありますか?
そのまま放っておくと、大変なことになりますよ。